Goose350



 “Goose350”という名前を聞いて、まずイメージされるのは、英語を直訳した“ガチョウ”ではないでしょうか。しかし、これは正しいものではありません。
 イギリスのマン島で1907年より行われているTTレース。バイクの創成期このレースを通し技術が磨かれてきました。そのためマン島はバイクの聖地あるいは故郷と呼ばれています。レースには島の一般道が使われます。そのコースを象徴する有名なコーナーがあります。それがGoose tight neck cornerです。ガチョウの首のように急峻に曲がるカーブです。実は、Goose350はこのコーナーの名前の一部である“Goose”をとって名づけられました。“Goose”はコーナーを指すものであり、鳥のガチョウではないのです。
 Goose350は、コーナーの名を冠した名前の経緯からも見えるように、Goose350の開発する際のコンセプトが「コーナーリングを楽しむためのマシン」でした。実際につくりは、フロントにΦ39倒立サスペンション(SUZUKI RG125Γと共通のもの)、リアにリンク式モノサスペンションと強力な足回りを採用しています。(サスペンションは硬いだけで動きが悪く、ただの棒とも言われますが・・)これにとどまらずコーナーの走りに対応するための強力な装備が数多く施されています。1990年代初めの頃、雑誌に掲載されたGoose350の広告のキャッチコピーは「直線は退屈だGoose」でした。マシンの特徴を端的に表した言葉だと思います。Goose350は、発売開始からすでに17年が経過し、昔のバイクとなりました。かつてのそれなりに立派だった装備も特筆すべきものでもなくなりました。しかし、未だにノーマルではシングル最高峰の装備を持つマシンと言われます。“Goose350”からイメージされるべきは“Goose tight neck corner ”がぴったりなのです。
 しかし、Goose350のデザインを見ると、困ったことに鳥を思わせる箇所がいくつか見られ、実はガチョウをイメージしてデザインした節もなくはないのです。私の場合、そうしたところはみな切り落としてしまいました。






 Goose350を特徴付ける最大のもの、これが“高回転エンジン”です。通常バイクのエンジンはほとんどみな高回転エンジンといって良いのですが、シングル=単気筒(シリンダーが1つのエンジン)においては回転で馬力を稼ぐタイプのものは珍しいのです。発売時のカタログには、次のように記されています。
シングルが、高回転を語り始めた。☆短気筒エンジンが未体験ゾーンへと加速した。誕生、Goose350。かつて、レブカウンターのレッドゾーンが10.000rpmから刻まれた、4ストローク・シングルが存在しただろうか。Goose350は、シングルマシンの奥深い魅力と底知れぬポテンシャルを徹底追求。これまでのシングルに対する固定観念にとらわれることなく、短気筒ロードスポーツの進化のために、最新テクノロジーを全身に漲らせている。    <カタログより抜粋>
  Goose350登場以前の主なシングルマシンというと、下の写真のSR、SRXでしょう。YAMAHAが誇るすばらしいシングルマシンです。
 
SR400 最高出力27ps
レッドゾーンは7.000rpm からです。

SRX400 最高出力33ps
レッドゾーンは7.500rpm からです。
  SRは製造開始が1978年と古く、トラディショナルなスタイルを特徴としています。空冷SOHC・2バルブの古風なエンジンです。ギアにバランサーも持たないため、エンジンの振動(鼓動)が楽しめます。しかし、とにかく加速しない、止まらない。コーナーリングを楽しむのでなく、平らでまっすぐな道をトコトコのんびり走るのがちょうどいいというマシンです。
 SRXは、SRと異なり、走りを強く意識したマシンです。当時、YAMAHAは、(今と違って)シングルに本気で力を入れていました。1986年に製造が始まり、その後、3回モデルチェンジが行われました。写真は最初の型の1型です。基本的には3型までは、圧縮比の変更、ブレーキの変更等、細部の見直しが行われていきました。4型では、弱点とされたフレームを一気に2倍の太さに強化、リアサスもモノサスペンションと大幅な見直しが行われます。空冷SOHC・4バルブ、スムーズにふけあがるエンジンが強力でした。次のモデルチェンジで、YAMAHAの誇る5バルブエンジンの投入が期待されたのですが、その5型は登場することなく、1998年に生産終了となってしまったマシンです。(SR、SRXともに昔乗っていたマシンです。楽しいですよ。)
 SRのレッドゾーンが7.000rpm〜、SRXのレッドゾーンが7.500rpm〜です。Goose350のレッドゾーンが10.000rpm〜というのは、たいへん高いことが分かります。シングルとしては、一般には回転で馬力をかせぐマシンはめずらしかったのです。通常のシングルの場合、低回転でトルクが強く出るよう設定され、クラッチをつなぐとトンッと路面をタイヤが蹴る感触が伝わってくるのが普通
です。Goose350の場合そうではなく、ツイン(2気筒)エンジンにも似ています。ちょうど、シングルとツインの中間のような感触です。本当に気持ち良く回ります。実際、11.500rpmぐらいまで回しても大丈夫なようです。決してパワフルではありませんが、味わい深いエンジンです。







  マシンの特性を最も左右するものが、フレームです。Goose350のフレームは、しなやかでかつ美しい優れたフレームです。こちらも、発売時のカタログを参照します。
高回転エンジンを引き立てる、計算されたフレームワーク。Goose350/250のフレームには、オリジナリティーあふれるデザインを採用。いくつかの直線材を複合し、簡潔で合理的なフレームワークとしている。最小限の部品点数で立体トラス形状の強度メンバーを構成したダイアモンドフレームは、軽量にして高剛性を実現。またこの軽くシンプルなフレームをより強固なものとしているのが、アルミ鋳造製のスイングアームピボットブラケットである。   <カタログより抜粋>
  フレームは、たいへん奥が深いもののようです。簡単にゆがむようでは、道路を走ったときに不安定となります。高速走行、コーナーリング時には、怖くてしようがありません。かと言ってガチガチに硬くしても、路面のギャップをもろに受けたり、これも不安定で良くないようです。剛性があり、かつ適度にしなることがフレームの条件です。フレームでは剛性と柔軟性という一見すると相反するものがバランスよく両立されているのです。たいへんすごいことです。バイク全体では、サスペンション、ホイール、ステム、エンジン・・・さらに様々な要素が入ってきます。これら全てをバランスをとるというのですから恐ろしいことです。一流メーカーの持つ技術というのはとてつもないものです。
 Goose350のフレームは上の写真のような構造をしています。剛性は強いわけではありませんが、ねじれもしなりで逃がす良いフレームであると言われています。見た目もたいへん美しいです。私は、国産のフレームで最も美しいと思っています。(近くで見ると溶接は雑なのですが・・・ SUZUKIの弱点でしょう。ジムニーも溶接部から錆びる錆びる・・・涙)



 話は変わりますが、左のバイクは、一見Goose350に見えますね。しかし、似てはいますが、これは別のバイクです。名前はSaturno(サトゥルノ)、イタリアジレラ社製のものです。フレームも良く似ています。実は設計者が同じ人(萩原直起氏)。母は違うが、父は同じ。母(メーカー)違いの兄弟というわけです。
            






SUZUKI GOOSE 350

TOP   TOP

| TOP | Jimny | Goose350 | Delica | Tour | Link | BBS |

inserted by FC2 system